日本の経済構造でのトリクルダウンの蓋然性は乏しい

消費税導入により、企業収益は改善していると言われておりますが、原材料を輸入している中小企業の場合はかなり厳しい状況が続いております。

一番大きな要因は円安ということになりますが、原材料を輸入し、それを加工して大企業に納品するという中小企業が多いかと思いますので、円安で原材料費が大幅に上がってしまったら、利益がほとんど出なくなってしまうのは必然といえます。

例えば、民主党政権下の円高の状況では、1ドル80円台だったわけですので、100万ドルで原材料を輸入しても8000万円で済んでいました。けれども、現在は1ドル110円前後になっていますので、1億1千万円にまで原材料費が跳ね上がり、大幅なコスト増になってしまうわけです。

そして、出来た製品や部品をそのままの価格で大企業に納品し、大企業の方ではそれらの半製品を最終的な完成品に組み立てて輸出するわけですが、大企業は同じ100万ドルで販売するにしても、以前までは8000万円にしかならなかったものが、現在では1億1千万円で売れるというホクホクの状態になっているわけです。

テレビやパソコン、あるいはカメラや自動車などを製造している大企業は、無数の中小企業が製造した半製品を集めて組み立てて商品化しているわけですので、大部分の中小企業は打撃を受けているのに対し、儲かるのは1部の輸出関連の大企業だけといえます。

そして、その大企業に焦点をあてて平均賃金を割出し、その数字を元に公務員の給与も上げている、それが現在のアベノミクスの状況といえるものと考えられます。

いわゆる「トリクルダウン」という考え方がありますが、現在の日本の経済構造でトリクルするには、大企業が儲かった分の利益を、中小企業の半製品の購入価格に転嫁しない限りはトリクルしないはずです。

けれども、儲かった分、それは内部留保に回ってしまうわけですから、トリクルダウンは発生しないものと私は考えております。これが円安ではなく、生産量が増大することによっての企業収益の増大ということならば、中小企業への発注量が増えることによるトリクルも可能性はあります。

けれども、実態でいえば、円安による要因が大きいですので、どこまでトリクルするのかについては不透明な部分が大きいです。これらを踏まえて、来年、2015年度の日本経済を占ってみますに、これ以上の円安が進んだ場合の中小企業への影響がどこまで出てくるのかに焦点が集まっていくものと思われます。