経済

先日から注視していた為替相場ですが、1ドル139円をつけた後に反発し、現在は142円あたりまで円安にふれています。

為替の反発

ここを割り込むと円高が加速していたかもしれませんが、ひとまずは持ち直した印象も感じられます。

今後の展開としては三角持ち合いになる可能性もありますが、7月9日にはトランプ関税が本格化してきますし、債務上限引き上げ問題による米国デフォルトの懸念があるため、1ドル150円以上まで回復することは考えにくいです。となると、反発は限定的で一時的なものとなり、そう遠くもない時期に再度1ドル140円割れを試す展開になりそうな予感もしています。

依然としてトランプ大統領が利下げを希望している以上、大幅に反発するには円安に振れる材料は乏しいかもしれません。どちらかといえば、まだ下落チャートの途中で、現在は一時的な反発の印象があります。

ゴールデンウイーク後あたりに、いつもの債務上限の引き上げ問題が出てくるはずですが、仮に引き上げるにしても、5,350兆円の債務残高があるなか、米国政府は低金利での借り入れや借り換えをしたいはずです。そのためには、ドル高で長期金利が上昇してもらっては困るはずなので、ドル安にせざるを得ない事情があるものと考えてます。

為替相場にもひと波乱ありそうな予感がしてますが、反発が失速し、円高が継続しそうなあやういチャートのようにもみえてきました。

ここ数年の為替相場を俯瞰してますと、2023年の年末、2024年の秋のいずれも1ドル140円の壁で反発して、1ドル150円台を維持してきました。

1ドル140円の攻防

そして現在、再び1ドル140円の壁と対峙してますが、ここで反発せずに割り込んでしますと、次は1ドル130円まで下落することが予想されます。さらに、130円でも反発しなかった場合、その次は1ドル115円まで底が見えてきます。

いずれにしましても、ここ数日で1ドル139円台に突入するか否かは、今後の為替相場を占う上で重要なポイントになります。ここ最近の円高ペースはかなり速いため、このままのペースが継続すれば、夏には1ドル120円突破、秋には1ドル110円突破の可能性もあります。

現状、SP500などの米国株に投資しているNISA組は、株価の下落と為替の円高基調でダブルパンチを受けているはずですが、まだ損切りの判断をしきれていないのではないかと懸念してます。このままゴールデンウィークに突入しますと、その後は5月のセルメイ相場に突入し、夏にはトランプ関税の90日間猶予期間も終了します。そして、秋には円高とトランプ関税の影響による企業業績の悪化で下方修正が相次ぐ形となるかもしれません。

去年秋の日銀利上げによる株価の乱高下とは違い、今年はトランプ関税が原因のため、日本政府にできる株価対策は限られてくるものと思います。このまま日経平均株価が暴落してしまいますと、日銀債務超過など別の問題も出てくるものと思いますが、当面はリスクオフの展開になるのかもしれません。

トランプ大統領は第1期目の時もそうでしたが、FRBに利下げを要求しており、パウエル議長の解任も辞さないかまえを表明しています。

一方、パウエル議長は利下げに慎重な考えですが、このままトランプ関税で不況になってしまうと、いずれは利下げせざるを得なくなるかもしれません。また、トランプ関税による不況をみこして、原油価格も下落しつつあるなか、インフレが終息すると利下げの環境が整うことになります。

いずれにしても、FRBは徐々に利下げの方向に動く状況のなか、日本はむしろ追加利上げのタイミングを模索しているため、今後は日米の金利差が急速に縮小していく可能性もでてきています。

以下は日米金利差と為替の推移ですが、金利差の縮小にともない、すでに円高方向にすすんでおります。

日米金利差の推移と為替

ただし、Dot Plotでは、2026年末で3.5%程度、2027年末でも3%程度のため、利下げするとしても、それほど急速な下落にはならないというのが市場関係者の見方のようです。

また、日銀の追加利上げにつきましても、トランプ関税の影響をみつつ、場合によっては、一転して利下げも辞さないとの報道もされています。

ただ、報道されているとおり、もしトランプ大統領がパウエル議長を解任した上で、利下げを強引に推し進めた場合、日米金利差が縮小し、円高が急速に進んでしまう可能性もあります。

トランプ関税の発動には90日間の猶予がありますが、何がおこってもおかしくない状況となっており、今後、台湾有事でもない限り、円高方向へ進行していくのは不可避かもしれません。

今後、1ドル120円程度の円高になれば、日本の物価高もおさまっていくものと思いますが、1ドル110円~120円程度になるには、はやくても今年の年末ごろまではかかるものと予想してます。

国民民主党の103万円の壁の引き上げが議論されていますが、これは働き控えを解消する目的のほか、7~8兆円規模の大幅な減税策の側面もあります。

仮に、国と地方で7兆円の減税となる場合、10年間で70兆円規模となりますが、この財源を確保しないままに国債で賄うとなれば、国債や為替への影響が出てくる可能性は否めません。

記憶に新しいのは、2022年にイギリスのトラス政権が大幅な減税策を打ち出した際には、通貨、国債、為替が下落してトリプル安となり、大混乱を招いてトラス・ショックとなりました。単純に比較はできませんが、日本でも財源のないままで大幅な減税策を打ち出した場合、国債の暴落や円安など、何らかの影響が出てくるものと思われます。

現状では、引き上げ幅は20円~30円程度の小幅なものに留まると予想されていますが、万一、75万円レベルでの引き上げ幅が決定した場合、為替や国債に影響が出てくるはずです。

もし75万円の引き上げが実現した場合、これをきっかけとして、次々と減税策が打ち出されていき、財務省による歯止めが効かなくなってしまうことも考えられます。

ただし、日本の場合はもともとが放漫財政で、すでに1000兆円を超える借金がありますので、今さら7~8兆円程度増えたとしても市場に与える影響は限定的との見方もあります。タイミング的にも、米国トランプ政権がウクライナ停戦を実現した場合、原油安によりインフレが終息してドル安の流れになるはずなので、通貨安ではなく、円高方向に触れてもおかしくはありません。

トランプ政権がウクライナ停戦を実現できるか、あるいは日銀が追加利上げに踏み切るのかなど、さまざまな要素もからんでくると思いますが、ここ数か月間は金融市場にどのような動きが出てくるのか、不透明な状況が続くものと予想してます。

先日、FRBが0.5%の大幅な利下げを実行しましたが、円高にはならず、円安方向へとふれているようです。

この原因を考えてみるに、長期金利が上昇していることがひとつの要因かと思います。

今のところ、短期金利やドルインデックスには変動がありません。

FRBが0.5%の利下げをしたのに、長期金利が下がらないのはなぜかを考えてみますに、1つはつなぎ法案が拒否されたことが原因といえます。トランプ氏が要求する移民関連の条項に反発し、つなぎ法案が拒否されており、このままですと政府機関が閉鎖する事態が懸念されています。

しかしながら、移民関連の条項を除外するとのことで、このつなぎ法案は通過する見通しになっているようです。そのため、もし無事に通過した際には、長期金利が低下して円高方向にふれる可能性があります。

加えて、そもそも0.25%の利下げを主張したメンバーのなかには、米国のインフレがまだ完全におさまっていない状況のなか、大幅な利下げはインフレの再燃をまねくおそれがあると考える人もいます。万一、インフレが再燃してFRBが失敗した場合、さらなる利上げを実行する必要が出てくるため、長期金利が高止まりしている可能性があります。

いずれにしましても、FRBの大幅な利下げに加え、日銀の利上げも予定されているなか、当面は1ドル130円あたりの円高にすすむ結果になっていくものと思われます。

日銀の利上げにつきましては、高市氏が利上げに強く反対しているため、総裁選の結果によっては円安方向にふれる可能性もあるかもしれません。いずれにしても、基本的には円高基調ですすんでいくものと思われます。