経済

昨年、円安が125円程度まで進んでいましたが、物価高による消費冷え込みの影響はそれほど大きくはありませんでした。せいぜい贅沢品を倹約するとか、野菜を買わないレベルで済んでいたと思います。

けれども、トランプ氏が大統領に当選した後の円安は原油高を伴っているため、これまでの円安とは性質が違います。原油高となれば、ガソリン価格をはじめ、日常的な様々な価格に影響してきます。

これにより、日常品の値上げが予測されていますが、賃金の上昇を伴わない状況下での物価高は消費の冷え込みがさらに加速し、内需が崩壊、結果として価格を下げないと売れない状況となり、安売り合戦が展開されてくるものと思われます。消費者物価指数は下落の一途をたどっておりますが、デフレからの脱却は極めて難しい状況になってきたといえるでしょう。

いずれにしても、社会保障費の負担が上昇しているなか、可処分所得はますます減少していくものと思われますが、デフレからの脱却は絶望的なように思えてきました。今後、原油高によるガソリン価格の上昇が本格化し、さらに大雪などの影響も加わることにより、燃料費の負担増となった場合、消費の冷え込みが加速していくものと思われます。

シェールオイルが息を吹き返してきますと、再度、原油価格が下落していくものと思われますが、しばらくの間は原油高が継続していくものと予測されております。

米国大統領選挙ですが、たった今、トランプ氏に当選確実が出たようです。

当ブログでは、今年の4月からドナルド・トランプ氏が大統領になり、ドナルドミクスで円高が加速すると明言しておりましたが、今まさに現実のものになりました。ヒラリンクリントン氏とは接戦となりましたが、クリントンさんに核のキーを預けることができるかというと、ぼくにはどうしてもイメージが湧かなかったです。

海外メディアで報道されていたような健康上の不安もありますし、サッチャー首相のような鉄の意志を持つ女性かというと不安が残ります。加えて、夫婦で大統領になるということには、政治の私物化というイメージが付いて回ることになります。「自由の国」というアイデンティティーを持った米国で、世襲制のような状況になることはイメージしにくいものがあります。

上記の理由から、今回の選挙結果は、ぼくにとってはごく当然の結果といえるものですので、特に何の驚きもありません。ただ、日本のメディアでは予測が困難だったようで、意外な結末として受け止められているようですが、各種の情報を突き合せれば、当然でてくるべきものが出てきた、いわば必然の結果だったといえます。

総じて、日本のメディアをはじめ、BBCやCNNなどの海外メディアにおいても、ブレグジットからはじまった一連の国際情勢の大きな流れを見誤ってしまいました。「こうなって欲しい」、「この人は嫌だ」という希望的観測で各種の報道がなされていましたが、政治の舞台はそのような単純な理由で動いているわけではないのです。

結局、今後は年金資金の損切りと円高が加速し、来春あたりからは日本経済に新たな展開が生じてくるものと思われます。ただ、これは主観にはなりますが、そう悪い結果にはならないとぼくは考えております。むしろ、トランプ大統領の誕生で、少なくてもぼくにとってはプラスになりそうな気がしております。

ドイツ銀行が米国司法省から巨額の賠償金をかけられていますが、一時は減額の合意が形成されたとの報道がなされ、株価が回復するかに見えました。それから一転、先日になって合意には至らなかったとの報道があり、株価は再び下落しはじめております。

ここまで株価が下がってきますと、増資による資金調達は難しい上、新たなめぼしい収益源もないなか、ドイツ銀行の株価の下落はさらに拍車がかかってしまうものとぼくは見ております。また、資金不足に陥る可能性もあるため、リストラによる経費削減を実行せざるを得ませんが、人材が流出してしまうことにより、さらに収益が悪化してしまう可能性が高いです。

ドイツ銀行の収益力が悪化してきた原因には、マイナス金利の影響などもありますが、リストラによる人員削減で優秀な人材が流出してしまったことも原因のひとつに考えられるでしょう。このような悪循環に陥りつつあるなか、他にも多数の訴訟を抱えておりますので、何かのはずみで破たんしてしまう可能性も現実味を帯びてきました。

エコノミストの多くはドイツ銀行は巨大すぎてつぶせないとのコンセンサスを形成しておりますが、巨大すぎるがゆえ、一旦坂道を転げ落ち始めると誰にも止めることができません。最終的には公的資金の注入しかありませんが、メルケル首相は否定はしているものの、いずれかの時点でこれに踏み切らざるを得ないものと思われます。

米国大統領選挙や英国のEU離脱、中国の景気減退など、世界経済へネガティブなインパクトを与える可能性が高い要素がいくつか存在しますが、このドイツ銀行の破たん問題は英国のEU離脱ともリンクしているため、EU離脱の連鎖による崩壊というワンランク上のリスクに発展する可能性があります。

そういった意味で、英国がまっさきにEUを離脱したのは、ある意味で正解だったのかもしれません。

ドイツ銀行の破たんが懸念されておりますが、メルケル首相が公的支援を否定したことにより、リーマンショック級の不況が現実味を帯びてきました。ドイツ銀行はかねてから悪名高い銀行として知られており、多方面で訴訟を抱えている状態ですが、今回は米司法省への1.4兆円にのぼる和解金の行方が注目を集めています。

このドイツ銀行が米司法省から罰金の支払いを求められているのは、2008年リーマンショックの時、不透明な不動産担保証券を投資家へ売りさばいていたからです。これに対する罰金として、アメリカから1.4兆円もの巨額訴訟を抱えているわけですが、ほかにも株式や債券などの不正取引疑惑により、多数の訴訟を起こされています。

東証でもドイツ銀行は空売り残高の多い銀行として知られており、個人投資家には敬遠されている銀行ですので、はやくつぶれてほしいと心から願っている人も多いです。ただ、世界経済へ与える影響には計り知れないものがあり、つぶすにつぶせない事情があります。

おそらく、今後は米司法省となんらかの妥協案が出てくるものと思いますが、ちょうどリーマンショックのときと同じ9月ということもあり、ここらでリーマンショック級のイベントがやってきても不思議ではありません。

万一、リーマンショック級の大不況となった場合、リスク時の円買いで円高になり、日経平均株価は大幅に下落するものと見られていますが、それに加えて米国大統領選挙の行方も注目を集めています。いずれにしても、市場関係者の間では円高にふれるものとの見方が強まってきており、しばらくはリスクオフの展開になってきました。

日銀の黒田総裁がインフレ2%の目標達成を2018年度頃まで先延ばしにすることを発表しました。当初は2年で2%達成予定だったものの、3年半が過ぎた現在でも未達となっており、さらに1年半延長されましたので、結局5年かかる計算になると思います。

しかし、このような状況で本当に2018年には到達しているのでしょうか?

確かに、原油価格の下落や消費増税による需要減の影響などもあるかと思いますが、政府は当然、そのような外部要因もコミコミで試算していたはずです。地震などの災害とは違い、原油価格の下落や消費増税による影響は誰もが予測可能な要因でした。米国のシェール革命に対抗するため、中東は原油価格を下げるであろうことは誰もが予測していたことですし、消費増税による需要減ついても何年も前から予測されていたことです。

ですので、インフレ2%未達の状況というのは、他に要因があったとしか考えられません。

ぼくの認識では、これは日本国民のデフレマインドが異次元のレベルに到達してしまったのが大きな原因であると考えています。今、若年層に広がりつつある「ミニマリスト」という消費マインドが社会的なデファクトスタンダードとなりつつあり、この点を団塊の世代は見落としています。この強固なデフレマインドを前に、小手先の経済政策では歯がたたないのだろうと思われます。

例えば、最近、話題になっている大谷投手。

彼は年棒2億円であっても月1万円ほどの生活費で暮らしているようです。これは決して大谷君が特異なケースではなく、多かれ少なかれ、現在の若年層の消費マインドは似たようなものです。

もしも、日本国民が全員、大谷君だったとしたらどうなってしまうでしょうか?

単純に計算すれば、日本全体での売上高が年間12兆円になってしまいます。これは現在の売上高である約1335兆円(参照:平成24年経済センサス)の100分の1以下です。つまり、物を作っても全然売れず、値下げ合戦が繰り返されることにより、物価が下落してデフレに拍車がかかることになるはずです。

もちろん、決して大谷君を批判しているわけではなく、アスリートとしてのストイックさにぼくはリスペクトしております。なので、一般庶民である我々とはまた別の話かと思います。

けれども、社会全体のベクトルとしては無駄なものは一切消費しないという方向へ向かっており、この消費マインドの変化は特に若年層で顕著です。いわゆる消費マインドに歴史的なパラダイムシフトが発生しているわけですが、バブル経済を経験してきた団塊の世代には理解できないのかもしれません。

このままの状況ですと、2018年のインフレ2%達成は困難な状況であると僕は考えています。